【記事】並木と共に40年、しなやかな挑戦

2021/07/29(木) ライター記事

あしたタウンライター記事#6

 

様々なお店が並ぶ、金沢センターシーサイド名店会。

その一角、アーケードの入口にあるお店を訪れると、新型コロナウイルス対策のビニールカーテンに、色とりどりのマスクが “展示”されているのが目に入るはず。このお店「ワダ シーサイド」を切り盛りされている畠山郁子さんによる自作マスクです。お店を構えて40年、畠山さんの目から見た並木について、お話を伺いました。

 

「困った時のワダ頼み」

 

畠山さんが、この商店街でお店を始めたのは今から40年ほど前。

「私の父がね、ここを申し込んで、当たったんですよ。4倍くらいの倍率で。当たったはいいけど誰も店をやれる人がいなかったから、どうしても私たち(畠山さん夫妻)にやってほしいということで、急遽やることになったの」。

1980年、現在の並木ラボのあたりで洗剤や金物などを売る雑貨屋さんを始め、その後、1993年に今の場所に移転。その際に、この場所にあった宝石屋さんがたばこを扱っていたので、それを引き継ぐ形でたばこも売り始めました。DPE(写真現像)の取次なども手掛け、当時は「困った時のワダ頼み」と言われるほどあらゆる商品を扱っていたそうです。「私の旧姓がワダなの。石鹸の問屋をしていた私の父親が当てたお店だから、ワダ商会の支店みたいな形で」この屋号に。

 

写真:常連さんがどのたばこを買うか覚えていて、姿を見るやいなやそのお客さんのお気に入りのたばこにスッと手が伸びる畠山さん。カメラに写るのは恥ずかしい、とはにかんでいらした。

 

時代の変遷と、コロナ禍でのタバコ需要

 

百円均一のお店などが台頭するようになってからは、たばこを主力商品にしています。この場所に移転した当時は「たばこの営業の人が、なんでこんなに近いのに許可が降りたんだろうねって言うくらい、このあたりだけで5軒くらいあったのよ。それがみんな1軒辞め2軒辞めして……。DPEも、最初の頃は朝晩集荷に来てたの。それが1日1回になり、2日に1回になり、最後の頃には時計の電池交換だけ」と話す畠山さん。「今はモノを売るのがむずかしい」とおっしゃいます。けれどそのいっぽうでDPE終了後、写真を印刷してほしいというおじいさんに自宅のパソコンでプリントアウトしてあげたのがきっかけで、趣味として写真を始めたり……と時代の変化とともにしなやかに生きてきたことがうかがえます。イオン(金沢シーサイド店)にもたばこ屋さんを出店しています。

2020年4月に発令された緊急事態宣言については、「たばこを吸う人は増えたんじゃないかな。会社では吸えないでしょ。自分の家だったら吸えるから」と意外にもたばこの売り上げには影響が少なかったようです。

 

写真:地区センターの写真教室に通って8年。パソコンで編集加工まで手がけます。左は富岡八幡宮の薪能の「釜火」。

 

布マスク誕生秘話

 

小学生の頃から洋裁・編み物が好きだった畠山さん。お子さんのセーターもご自分で編んでいたそうです。自作グッズをお店に置くようになったのは20年以上前から。「最初はワンちゃんのレインコートを作り始めたの、その頃は犬の洋服はあんまり売っていなくて。その次はワンちゃんの手編みのセーター。ちゃんと測って、合ったサイズを作ってあげてたの」。そのほか、バッグやお薬手帳入れなど色々なものを作ってきました。布マスクは、「コロナが始まってすぐにマスクがないってことで、じゃあ作ったらいいんじゃないかしら?と思って、家にある生地で作ったら病みつきになっちゃった」。お友達へのプレゼント用に合計100枚(!)くらい購入したという「ファン」の方にお話を伺うと、「マスクは今オシャレでしょ。ここのはどんなマスクでも私の顔に合う。次はどんなのかなって楽しみで来てるの」と新作のチェックに余念がありません。

店内には小さな椅子があり、常連さんたちは畠山さんとのおしゃべりを楽しみながら休憩していきます。終始朗らかに笑いながらインタビューにお答え下さった畠山さん。ビニールカーテン越しの彼女の笑顔に会いに行ってみよう。

 

写真:ワンちゃんそれぞれのサイズに合わせてオーダーメイドしてきた毛糸のセーター。「100着以上作ったんじゃないかしら」

 

写真:リバティプリントなど生地にもこだわるマスク。「作るのってほんと楽しい、出来たときが嬉しい」。思わず筆者も何枚か購入。

 

―Information-

ワダ シーサイド

住所:横浜市金沢区並木1丁目17-17(金沢センターシーサイド名店会内)

電話番号:045-773-5880

 

 

ライター:住吉山 実里

取材日:2020年11月

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