【記事】~並木こども哲学を通して育む対話の力~

2023/03/09(木) 情報コンシェルジュ

~並木こども哲学を通して育む対話の力~

 

並木地区内には、2つの中学校、3つの小学校があります。

近隣には保育園、幼稚園、様々な子育て支援の施設がある他、地域の皆さんが子どもたちをあたたかく見守るような形で楽しい行事や習い事などが充実しています。

私自身、子育てをしているのですが、小さな子どもたち~思春期の地域での居場所を考えています。

何かヒントがほしいと思い、生まれも育ちも並木、現在、子育てをしながら並木で生活し、子ども哲学をしていた笹浪美緒先生にインタビューさせていただきました。

写真:こども哲学で笹浪先生が絵本を読み、子どもたちが体で表現♪

 

並木こども哲学

 

シーサイドタウン名店会に拠点を構える「並木ラボ」で、2015年1月~2019年3月まで、笹浪先生が「並木子ども哲学」の活動を行なっていました。笹浪先生の娘さん(開始当時2歳)と年齢の近い子どもたちが対象です。子ども哲学とは、絵本などからテーマを揚げ、子どもたちが「なんで?」と思ったことをみんなで話し合う取り組みです。

詳しくは、並木子ども哲学広報誌「コテツ」をご覧下さい。並木ラボで行っていたので「並木子ども哲学」と名付けました。

写真:哲学広報誌「コテツ」とコミュニティボール

※コミュニティボールを持ったお友達がお話をできます。

お友だちが話しているときは・・・

聞く・何を言っても大丈夫・何も言わなくても大丈夫・「なんで?どうして?」と聞いてみよう・けんかはしない!!5つの約束♪

 

笹浪先生は大学で政治学を専攻し、自由、平等、正義、社会といった考え方をめぐる民主主義の勉強をしてました。「自由とは何か」「本当の平等とは?」などといったテーマを掲げて議論し、当たり前とされている考え方を疑って、正解がない問いの答えを仲間と延々と考えて「ああでもない」「こうでもない」と悩む時間がとても楽しい時間だったそうです。

大学を卒業してしばらくした後、笹浪先生は娘さんを授かりました。当時2歳の娘さんは好奇心旺盛で「これはなに?」「なんで?」を繰り返していました。ある日娘さんに、「心はどこにあるの?」と聞かれて笹浪先生は答えるのにとても困りました。「普段の絶え間ない質問にほとほと疲れていましたから、なおさら頭が回りません(笑)。ですが、その時にふと“あ、これ大学のゼミでやったことと同じじゃん”と懐かしさと同時にワクワクする気持ちが芽生えた」そうです。子どもとも正解のない問いを考えることができるんだと感動し、まずは娘さんと、そして娘さんの友達たちとやってみようということで調べていたら、「NPO法人子ども哲学おとな哲学アーダコーダ」と、NPOが提唱する「子ども哲学」に出会いました。団体主催の子ども哲学入門講座、子ども哲学実践講座を受講し、並木での子ども哲学の取り組みが始まりました。団体から認定を受けたファシリテーターとなり、立ち上げに向け看板の準備。デザインを学んでいた友達がイラストを作成し、どこでやろうかなぁと思っていたら…そこに並木ラボがあったのです。

 

 

写真:こども哲学でかるた

 

写真:こども哲学、絵本から子どもたちの思った言葉や絵

 

「中学生の方がこの記事をお読みでしたら、どうか最後まで読んで下さいね(笑)」と笹浪先生。

このインタビューを受けるにあたり、笹浪先生は、「ここでは、私は教員ではなく一人の並木の住民です。どうしても仕事の話もでますが、生徒のあなたではなく、並木住民のあなたに話しかけるイメージで答えています」と前置きします。

「公私を問わず私は、子どもたちが話し合う場面が大好きです。私が学校で行う授業でもグループで討論や意見交換を取り入れています。その中で子どもたちは、枠にとらわれずに自由に話し合い、大人の思考を飛び越えてユニークなアイデアを出します。そのアイデアの多くは、ルールや常識にとらわれている大人からでは出てこないもの。柔軟な思考を持つ皆さんは、簡単に大人を超えることができるのです。育児休業が明けた現在でも私が学校で行う授業では、“並木子ども哲学”の経験を活かしています」と言います。生徒たちには、資料から疑問や“変だなぁ”と思うところを探してもらいたい!と、そこから生まれる議論を大切にしているそう。

 

写真:大人も子ども大好きな場所、ふなだまり公園

 

地域につなげたい

 

並木子ども哲学の目的は、子どもが「なんで」と思ったことを発言し、みんなで考えることを通じて、子ども自身が「話す、聴く、考える楽しさに気づく」こと。それは、成果が見えにくかったり、生産性の低いことのように思えるかもしれません。ですが、正解のない問題を粘り強く考え続けることは、将来自分に立ちはだかる課題や困難に向き合った時にも、考え続ける姿勢を養うのではないでしょうか。笹浪先生は、スマートフォンで検索しても、出てこない問いの答えを考え続ける姿勢を身につけてほしいと考え、ただ、根を詰めて考えると疲れてしまうので、まずは友達と対話をしながら「話す、聴く、考える楽しさに気づく」ことを意識してほしいと思いながら並木子ども哲学の活動をしていました。

かつては、並木でも色んなところで子育てサークルが多くあったようですが、人口減少にともないサークル活動は減っているようです。並木子ども哲学を開催している並木ラボに、子連れの方がふらっと立ち寄り、お子様やお友達の考えにはっとする居場所を提供したいと考えていて、それが結果的に居場所づくりにつなっがたのかな、と思います。「また、当時、並木子ども哲学を通じて“並木から哲学者を生み出す!”というカッコつけたキャッチフレーズも考えていました。地域に哲学者がいることは誇らしいと思ったのですが、恩師に“言いすぎだ”と言われて泣く泣く却下しましたが、今でも悪くないと思っています」と笑います。

笹浪先生が出産後、並木へ戻るきっかけはお母様からの誘いでしたが、戻ろうと決意した理由は地域の商店街や自然の多さ、公園の数など、子育てがしやすいと感じたこと。笹浪先生自身、「かつての並木の子は、流行していたカードを買うために商店街に足しげく通ってお店の人に顔を覚えてもらえたり、その日の気分で遊ぶ公園を変えたり、家族でちょっと足を伸ばして緑豊かな富岡総合公園に行き、そこで走り回っていた。」という思い出や、子どもの時に並木でたくさん遊んだ記憶をたどると、その根底には安心感がずっとあり、この安心感が並木に再び住むことに対して背中を押してくれた」と振り返ります。

 

並木、富岡地区には子どもや私たち保護者の居場所が今もしっかりあると私は思います。並木ラボの親と子のつどいの広場「あしたひろば」をはじめ、小中高生の居場所「あすなみ」や富岡にある、ジュピのえんがわで行われている小中学生の居場所・学習支援の「ぼんぼんたいむ」さん。活動では、どなたでも参加できる地域食堂の「みんなでごはん」さんや「人形劇ぐるーぷ ら・らんじぇ」さん、絵本のリサイクル活動をしている「絵本くるくる会」さん、近年では富岡並木ふなだまりgionbune公園愛護会の「親子でごみ拾い」さんなど、子どもが楽しめたり、居場所を提供している拠点や活動がたくさんあります。

写真:「ぼんぼんたいむ」

 

また、並木ラボでの「パソコンなんでも相談室」や「編み物教室」、富岡並木地区センターの掲示板には大人の趣味のサークルの案内がたくさん掲載されています。私たち大人の居場所もこの地域にはたくさんあります。日々の生活に疲れたら、並木という地域に身を委ねてみてはいかがでしょうか。趣味や地域住民と交流を通じて生活がより楽しくなることを願います。現在、“並木子ども哲学”はお休み中ではありますが、ご要望があれば開催します!」と笹浪先生から頼もしい声を聞けました。

 

言葉のキャッチボール

 

並木に限ったことではなく多くの地域にあることだと考えますが、地域の世代間のコミュニケーションに壁があることを痛感します。壁が表面化し、感じることは、チャンスだと思います。表面化した「壁」を通じて、「話す、聴く、考える楽しさに気づく」経験にして、乗り越えませんか。そう、並木に必要なことは住民間の対話、そして哲学です。「並木ラボをはじめ、並木住民がいたるところで哲学をしている光景をみたいですね!」と笹浪先生は話します。

「私が並木出身だからこそわかることは、並木には素敵な人がたくさん住んでいますが、なかなか表立っていまこれを読んでいるような地域に関心のある皆さんに会うことはできません。なぜかというと並木に住む一人ひとりがご自身の生活を大切にし、仕事や家事育児など生活に集中しているのです。誰であっても、生活を邪魔することは基本的にはできません。一見元気そうな人も実は悩みがあったりなど、一人ひとりの生活に寄り添って想像力を働かせているうちに、並木子ども哲学の始まりでもある“なんで”にたどり着きます。そうして、だれかと“話す、聴く、考える楽しさに気づく”ことをしてみてはどうでしょう。話す相手がいなかったら私や並木ラボのスタッフが話し相手になりますよ!」と、笹浪先生。長年住んでるからこそ地域に暮らす皆さんへ向けたあたたかい言葉を送ってくださいました。

「並木から哲学者が生まれたのではっ!!」と、感じる日を楽しみに、今後の笹浪先生の活躍と地域に住む小さな哲学者たちを応援したいです。手をとり合い、時にはそっと見守るような言葉のキャッチボールが地域に広がることを願っています。

2023年 ライター まるこ

 

 

-information-

http://ardacoda.com/kodomotetsugaku/

(NPO法人子ども哲学 おとな哲学アーダコーダに見られるように、子ども哲学の活動は広まりつつある。)

20http://ardacoda.com/seminar/

( 子ども哲学を行う人のための講座で、笹浪は2015年に受講した。現在は子ども哲学ファシリテーター養成講座となっている)

-参考文献-

『子どもとつくる平和の教室』はるか書房

千葉県歴史教育者協議会編 小薗崇明・渡辺哲郎・和田悠著(2019)

『新しい歴史教育のパラダイムを拓く―徹底分析!加藤公明「考える日本史」授業』地歴社

加藤公明・和田悠編(2012)

 

 

・ぼんぼんたいむ:第1~4水曜日(休日以外)15:00~19:00ジュピのえんがわで開催 e-mail:20210109bonbon@gmail.com

・みんなでごはんお問合せ:cony.11.422@gmail.com

・富岡並木ふなだまりgionbune公園愛護会https://www.facebook.com/groups/532251511126473/?ref=share_group_link&exp=93fa

親子でごみ拾いの情報はこちらです。

・金沢シーサイドタウン地区社協:地域の情報を発信しています。

人形劇ぐるーぷ ら・らんじぇ,絵本のリサイクル活動をしている絵本くるくる会等のお知らせもします

 

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・編み物教室 ハンドワークICHIKO:毎週水曜日13:00~15:00並木ラボで開催

・パソコン何でも相談室:毎週火曜日10:00~15:00並木ラボで開催

・一般社団法人あしたタウンプロジェクトあすなみの情報はこちらです。

・親と子のつどいの広場 あしたひろばの情報はこちらです。

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