【記事】第23回金沢文庫芸術祭 ~こどもの未来は地球の未来~

2023/11/30(木) 情報コンシェルジュ

 

第23回金沢文庫芸術祭

~こどもの未来は地球の未来~

 

9月17日(日)これ以上のない晴天に恵まれ、「こどもの未来は地球の未来」をスローガンに掲げ、第23回金沢文庫芸術祭が開催されました。この芸術祭は参加する人がアートを通じて、新しい体験や新しい出会いをすることにより、未来へつながるきっかけが生まれることを期待して行われています。

1999年にスタートした芸術祭は年々来場者も増え、今では2万人が集まる一大イベントになっています。場所は、東京湾を見渡せる海の公園。金沢シーサイドラインの海の公園南口駅を降りると、南北に広い会場は、2つのステージ(ワールドステージ、Beeステージ)と4つのエリア(アートブース、わくわくワークショップ、お祭りフード、先住民族広場)にわかれていました。各会場は、色とりどりの鮮やかな横断幕や個性豊かなオブジェがアクセントとなり飾られています。今回の芸術祭では、どのような出会いが待っているのでしょうか?

さあ、金沢文庫芸術祭へご一緒にまいりましょう!

 

写真:ワールドステージ前に飾られたオブジェ

 

 

 

【第23回金沢文庫芸術祭 出店ブース配置図】

 

 

 

最初に訪れたのはワールドステージでした。会場へ一歩足を踏み入れると、大きな布に描かれた色彩豊かな可愛らしい絵で一面が囲まれ、ステージではすでに開会式が行われています。子どもからお年寄りまでの多くの人が集まって、最後に浅葉弾実行委員長のかけ声のもと、ドローン空撮による参加者全員の集合写真を撮り終え、オープニングセレモニーは一気に盛り上がりました。

 

 

 

写真:布一面に描かれた色鮮やかな園児による手描きの絵

 

 

ワールドステージ前のオブジェの向こうには、アートブースとわくわくワークショップが放射線状に軒を並べていました。特にアートブースでは、49の出店があり多くのオリジナルのハンドメイド作品が展示販売されていました。

 

写真:アートブースの「ニワトコ」さん。年に一回のお祭りにポップアップショップからブースを出店。かわいい手作り品が並び、癒しの空間を演出していました。

 

写真:アートブースの「sonamira」さん。「光る宇宙キーホルダー」を子ども達が手作り体験中。手頃な材料で、可愛いらしく作れる人気のお店でした。

 

アートブースを過ぎると、参加型コーナーのわくわくワークショップが並んでいました。1件1件が個性豊かなお店が多く、子どもから大人まで幅広い分野で体験でき時間の過ぎるのも忘れてしまう空間です。

 

 

写真:ワークショップの「おうち整体」さん。ふだんはひとりひとり個人で整体をしていますが、お祭りには4人チームで参加しました。やさしい笑顔の素敵な方々でした。

 

写真:ワークショップの横浜市金沢区ご当地かるた「カナかる!」さん。イベント限定で作成している『応援札』が目印。かるたの「こ」は「こどもの未来は地球の未来 金沢文庫芸術祭」。新作のクリアファイルも販売中でした。

 

 

ワークショップの広場から道路を渡ると、先住民族広場とBeeステージへと続いていました。

まずBeeステージへ向かうと、中央には個性豊かなエスニック雑貨店「チャイハネさん」プロデュースのステージがありました。

 

 

写真:左からギター奏者の近本和之さん、紙芝居ニストゆやまくみこさん、篠笛奏者の村山二朗さん

 

ステージからは心地の良い音楽が流れ出し、紙芝居ニストゆやまくみこさんの「ミラクル紙芝居だよ♪」がはじまります。演目は「きつねの窓」。両脇には篠笛奏者の村山二朗さんとギター奏者の近本和之さんが音を添えています。野外での紙芝居とはいえ、ステージは瞬く間に“ゆやまワールド”を作り上げ、聴衆はいつの間にか物語へと引き込まれていきます。

 

 

写真:虹を渡る先住民族の精霊が描かれた広場の横断幕

 

来た道を引き返し「先住民族の広場」へ足を運びました。先住人たちの智慧やメッセージを伝えるブースが広場を取り囲むようにして並んでいます。その一角で今回、素敵なお二人と偶然の出会いが待っていました。

 

お一人は浅葉和子さん。2人の仲間と「金沢文庫芸術祭」を最初に立ち上げた方です。そして、もう一人はブースの中で優しい笑みで座っていらした浦川浩造さん。なんと!アイヌの著名な「エカシ(長老)」の方です。

初めてお目にかかる浅葉さんは、とてもフレンドリーで若々しい方でした。今回の「金沢文庫芸術祭」を通して皆にどうしても伝えたいことを伺いました。

 

「今世界では戦争がはじまり、自然が壊され、気候も変化してきています。これを何とかしないといけないですね。私たちは自然と共存して、地球の中で生かされています。その考えは先住民族の人たちが教えとして日常の中に持っている考えなのです。その考えを大切にすると、きっと豊かな地球を取り戻すことができると思います。だから今伝えたいことは、先住民族の教えです。アイヌのエカシである浦川さんは、そのために今回の金沢文庫芸術祭に来てくださいました。」

 

写真:左からアイヌのエカシ浦川治造さん、浅葉和子さん

 

そして、浅葉さんより「虹の戦士」(北山耕平 翻案者)という1冊の本を教えていただきました。

物語の原作者は不明ですが、内容はアメリカ・インディアンの老婆と、その血をひく少年の物語です。

少年は目の前に広がる自然に触れ様々な経験を通してアメリカ・インディアンの教えに導かれ、その教えを身に着けていくというストーリーです。物語の最後に老婆は少年に語りかけます。

「わたしにつながるいとしい者よ。どうやったら虹の戦士になれるか。行け、行って学ぶがよい。

愛と喜びをみんなのあいだにひろげることだけが、この世界のにくしみを理解とやさしさに変えることができる。この世からいっさいの戦争と破壊をなくすために、残された道はもはやそれひとつしかない!」

(本書:「第8章ヴィジョンを求める」より)

 

 

では、「虹の戦士」とはどのような人なのでしょう?

 

「動物が好きで、木が好きで、人が好きで、虹が好きか。それならば、君たちが、虹の戦士なのだ。」

(本書「あとがきにかえて」より)

 

「虹の戦士たちは、誰からも命令や指示をうけない。

戦士は『指示や命令がなければ動けない兵隊』とはまったく異なるからだ。

虹の戦士とは、自分が好きになれるような世界を作るために、なにかを自発的に始める人たちだ。」

(本書:「まえがき 虹の戦士たちへ」より)

 

浅葉さんが今回どうしても伝えたかったこと、それは今ここに集まってきている子どもたちに「虹の戦士」になってほしいということです。そして、その思いをうけとめた「虹の戦士」が少しでもふえていってくれれば、世界は平和になるでしょうと語られました。

 

“地球が病んで 動物たちが姿を 消しはじめるとき

まさにそのときみんなを救うために

虹の戦士たちが あらわれる“

(本書:「アメリカ・インディアンに古くから伝わる言い伝え」

 

写真:アメリカ・インディアンに古くから伝わる言い伝えが描かれた幕

 

浅葉さんと浦川さんにお礼を伝えて、広場をあとにしました。

見渡すと同じ敷地には、他にも「にゃんころだん」企画の0歳から大人まで楽しめる、段ボールで作るにゃんにゃんストリートづくりや、芝生の上で思いっきり遊べるプレイパークなどがあります。

 

 

 

 

写真:にゃんころだん企画の段ボールのにゃんにゃんストリート

 

写真:子どもが思いっきり遊べる竹のジャングルジム

 

 

また、今回は参加できませんでしたが「わらしべ長者ごっこ」遊びもありました。参加者が受付等で赤いガムテープを貼ってもらいます。この赤いガムテープの人たちを目印にどんどんと話しかけて、お互いのものと「物々交換」を楽しむという企画です。何だか、ワクワクしますよね!来年は、是非とも

参加したいと思いました。

 

 

写真:会場で出会った未来の虹の戦士

 

 

第23回金沢文庫芸術祭には、子どもからお年寄りまで多くの人が訪れていました。今回初めて参加した金沢文庫芸術祭で、私はさまざまな体験や新しい出会いがありました。浅葉さんが永遠のテーマとした「こどもの未来は地球の未来」は、先人たちの智慧を学び今に生かし、親から子へと未来に伝えていくことだったのです。私自身も今回の体験や出会いを通して、本来の自分を取り戻し、目に見えない大切なものを見つめ直すことができることを学びました。この経験を大切にしていきたいと思っています。

この取材で出会った多くの方々へご協力をいただき心より感謝申し上げます。そして、今後のご活躍をお祈りしております。

最後に二見翼さん、今回の金沢文庫芸術祭取材依頼をいただき、記事編集にあたり適切なアドバイスやデータの提供をいただきました。本当にありがとうございました。

 

ライター  篠原 淳子

 

横浜市金沢区金沢町205

アサバ アートスクエア内

金沢文庫芸術祭 事務局
info@bunko-art.org

 

 

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